日本屈指のそば処として知られる山形県。そば文化が息づく山形にあって、全国的にユニークなメニューとして知られるのが「冷たい肉そば」です。
寒河江のお隣・河北町発祥のこのそばは、出汁に親鶏を使用するのが特長。具材に使用するのは、歯ごたえのある親鶏の肉とネギのみと、実にシンプル。寒河江の人たちは、夏の暑い日にも冬の寒い日にも「冷たい肉そば」を食しており、まさにソウルフードと呼ぶにふさわしい逸品。その「冷たい肉そば」の名店として、昼時ともなれば地元民はもちろん、他県からやってきた観光客や出張客で行列ができるのが「そば処 ひふみ」です。
「そば処 ひふみ」の創業は、平成5年(1993)。初代である清野孝一さんが、河北町名店「一寸亭」で初めて「冷たい肉そば」を食べ、そのおいしさに感動したのが始まり。なんと孝一さん、3日後には脱サラして「一寸亭」に弟子入りしたのだといいます。そして、4年の修業期間を経て寒河江で店を構えました。自分の城となった「そば処 ひふみ」で孝一さんが毎日打っているそば。北海道産のそば粉と月山の自然水を使用し、室温と粉の温度に合わせて水の温度を調整します。夏場は氷水、冬場は温水にすることで、コシのあるそばにすることができるのです。現在、店を切り盛りするのは2代目の清野桂さんですが、そば打ちだけは今でも孝一さんの仕事。毎朝、蔵を改装した作業場で、その日使用するそば、およそ30kgをひとりで打つのです。
桂さんは「うちは、そば屋ですけれど、自家製の中華麺もおいしいと評判なんです。スープとよく絡む縮れ麺で、熟成させることでツルツルとしたのど越しが自慢です。ぜひ一度試してみてください」と話します。
ところで、山形のそばには、げそ天を合わせるのが定番。「江戸時代、海のない内陸でスルメを戻して天ぷらにしたのが始まりだと聞いていますが、本当のところはわかりません」と笑う桂さん。「げそ天もですが、うちでは『耳なんてん』という、イカの耳を揚げた天ぷらを提供しています。こちらも、おすすめですよ」。
2代目として、さまざまなメニュー開発にも取り組んでいる桂さん。これまでも、たれにラー油を加え、カリカリに揚げた香ばしいワンタンの皮をトッピングした「サガエつけそば」やラー油とブラックペッパーが効いた「辛いつけそば二代目」などを生み出し、新たなファンの獲得に貢献しました。「これからも、新しいメニューを作っていきたいです。そして、新しい店舗も展開していければと考えています」と話してくれました。 月山の自然が育んだ清らかな水を使った、「そば処 ひふみ」の極上のそば。その味は、今日もまた多くの人を魅了していきます。